不作法ぶさほう)” の例文
小林はまたそんな事を顧慮こりょする男ではなかった。秩序も段落も構わない彼の話題は、突飛とっぴにここかしこをめぐる代りに、時としては不作法ぶさほうなくらい一直線に進んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この不作法ぶさほうきわまる訪問様式を、厳格げんかくあらためたいと思ったのではあるが、どうも習慣というのは恐ろしいもので、格子こうしにちょいと手がかかると、僕はいつの間にやらガラガラとやってしまって
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆえに折々かの石碑せきひの周囲に雑草がはびこって、見すぼらしくなりはせぬか、石が倒れて見る甲斐かいなきようになっておるまいか、悪戯いたずらの子供らが石の上に落書らくがきでもして不作法ぶさほうになってはおらぬかと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これは向こうの蛾次郎のごとく不作法ぶさほうではなくいかにもものしずかに、いるかいないかわからぬようにしてすわっていたが、木連格子がギーッとひらいたので、顔をさし入れた菊村宮内きくむらくないと目を見あわせ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃のは西洋の礼式というものを殆んど心得こころえなかったから、訪問時間などという観念を少しもさしはさむ気兼きがねなしに、時ならず先生を襲う不作法ぶさほうを敢てしてはばからなかった。
「——不作法ぶさほうひらに」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると由雄がまた呼びとめて、自分の父あての手紙を、お延の見ている前で、断りも何にもせずに、開封した。この平気な挙動がまたお延の注意をいた。彼の遣口やりくち不作法ぶさほうであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
腹の中で小林の批評を首肯うけがわない訳に行かなかった彼女は、それがあたっているだけになおの事感情を害した。自分の立場を心得ない何という不作法ぶさほうな男だろうと思って小林を見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「西洋はやかましい。御前のような不作法ぶさほうものには好い修業になって結構だ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてその形状かっこうがいかにも不作法ぶさほうにでき上って、あたかも水の通り道の邪魔になるように寝たり、突っ立ったりしている。それへ水がやけにぶつかる。しかもその水には勾配こうばいがついている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不作法ぶさほうな裏と、奇麗な表と。厄介やっかいでさあ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)