上手うま)” の例文
金兵衛は相当ケチケチした親方らしいが、それでも人使いが上手うまかったのだろう。怨んでいる人間なんか一人も居ないらしいのだ。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が自分に求めているだけの闊達かったつさ、強靭きょうじんさ、雄大さはまだわがものとしていません、まだその手前での上手うまさであり、しっかりさである。
歳太郎は子供のときから明笛みんてきや流行唄などを上手うまくうたったが、こんな処へ墜ちてきた自分をいつもかれの前ではさげすんでいたのである。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
岡倉氏の説明するところはなかなか上手うまいので、私にいやといわさないように話しを運んでいられる。氏はさらに言葉を継ぎ
浜中屋のお菊ちゃんが笛の上手うまいのは、天才でもあったが、一つは、病身のせいでもあった。露八は眼をつむって笛の音を聞いているとすぐに
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばし承引の返事もなく思いわずらう宮の胸中を一条の光芒こうぼうが閃いた。相人そうにん上手うまいといわれた少納言惟長これながのことである。
そのうち宮島さんという人がいろいろと自分で工夫し、上手うまくなって専門の石膏屋になったが、僕らも段々少い石膏で上手く出来るようになった。
美術学校時代 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
... なにしろ、波だってあまり上手うまく書けていないから、泳ぐにしたって楽じゃない、って。……面白いでしょう」「ノン」
「まア、そう。山口も上手うまいのね。でも、あたしなんか、そりゃ初めは淋しかったわ。だけど、もうこうなればね。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
私の高弟の小林勇君などは、見る見るうちに上手うまくなってとっくに師匠を凌駕してしまった。私を帝展の審査員とすると、勇は大観、古径のクラスになってしまった。
南画三題 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
阿部も伴も演説が上手うまくなっていた。聴衆は阿部や伴のゴツゴツした一言一言に底から揺り動かされているではないか! 健は睡尻にジリジリと涙がせまってくる。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「内側から追い抜くのは違反だからね。だから、君たちの到着と出発の順序も、ああなるんだ。……でも、あんな道で……まったく、君も運転が上手うまくなったものさ」
あるドライブ (新字新仮名) / 山川方夫(著)
(ああ、身震みぶるいがするほど上手うまい、あやかるように拝んで来な、それ、お賽銭さいせんをあげる気で。)
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分はそれらの小説を讀んで上手うまいとも下手まづいとも決める事が出來なかつた。
そこで昨夜は失敗したが、今夜こそは一つ上手うまくやって、——実はね君
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
と相手の笛の上手うまいことをほめた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
上手うまいもんだね」
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
スケッチが出来たら、下手でもさぞいい保養だろうと思います。寿江子は上手うまい。それでも絵は気まぐれにしかやる気がしない由。
「貴さまは、碁が上手うまいので、よく老公のお相手に召されるが……碁のうえなどでも、お叱言の出ることがあるか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この技師は俳句も上手うまいが、優秀なえらい技師ですよ。僕と俳句友達ですから、遠慮のらない間柄なんです。」
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「お前はなかなかお茶の飲みかたが上手うまくなったが、いつの間に覚えたのか……」などと、父は言ったりした。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ひのきの板を削って、すげる深さだけそこを削って嵌込はめこにかわでつけて、小刀の柄がピッタリついて取れないようにすげ、それを上手うまく削って父なら父流の柄の形にこしらえ
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
踊が上手うまい、声もよし、三味線さみせんはおもて芸、下方したかたも、笛まで出来る。しかるに芸人の自覚といった事が少しもない。顔だちも目についたが、色っぽく見えない処へ、なまめかしさなどはもなかった。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阿部だけは、地主やその手先の役場の、とても上手うまい奸策だと云った。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
小説の上手うまくなるまじないに、「たけくらべ」の中の文字五つ六つを水に浮べて、凡庸なものたちにのましてやりたいと評した。
人生の風情 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
『ああ、わしのような気怯きおくれ者は、何をしたって、生きて行く力が足りない。体は弱いし、絵は上手うまくならないし……。悩むために生きているようなものだ』
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なかなか上手うまいな。」といふと
蒼白き巣窟 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
ああいうとこの描写でも上手うまいわね。とことんのところまで色も彫りも薄めず描写して行く力は大きいものですね。
「男ぶりなんか訊いているんじゃありませんよ。お灸が上手うまそうだか、下手へただかを、訊くんです」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皆ここのひとは上手うまくなりました。山岸しづ江さんなども。阿部一族(鴎外)の映画は好評です。今日は江戸城明渡し(藤森)です。では又。どうかそのお元気で。
それは、笛吹きの名人だった長五郎の遺物かたみかも知れないと人は云ったが、ほんとは、子どものうちから笛が好きで、彼女の笛は、長五郎以上にもとから上手うまかったのであった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうだろうか——怪しいもんだ。しかしまあ、流石さすが十五年アメリカを流れて来た人だけあって、上手うまいものさ、いやですと一言、はっきり云ってしまえば、もうここに息子顔を
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
上手うまくいったね。——同心なんていう者は、悧巧そうで、案外馬鹿なものさ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飾窓へやっと一つ着付人形を買う——あの時分の楽しかったこと……その時分からエーゴルはマンドリンが上手うまくてね、町で評判だった。自分がいては私によく踊らせたもんだわ。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いかにも二十余年前には、権六どののお腰はおろか、猿めは、導引どういん上手うまいとて、御一門の衆などには、わけてよう揉ませられたものじゃった。そして、お菓子など賜わると、うれしくてなあ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この頃は犬の鳴声の素敵に上手うまい奴もいるってネ」
舗道 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「そんなに上手うまいので?」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏には京子とあんまり上手うまくない手で書いてある。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
何か上手うまい方法はないでしょうかねえ
お久美さんと其の周囲 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
上手うまいな」
高台寺 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)