みっ)” の例文
窓はみっとも明け放ってあった。室が三階で前に目をさえぎるものがないから、空は近くに見えた。その中にきらめく星も遠慮なく光を増して来た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云いながら振袖を薪割台の上へ乗せて、惜気もなくザクウリッと二つみっつに切りました時は、多助も思わず手をって
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
客は定紋の暗合に奇異な思いがすると言って、まだこのほかに替え紋はないかと尋ねる。まるみっびきがそれだと答える。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白帆が二つみっつそのふもとと思われるところに見えました。じっと見つめていると、そこから大風おおかぜが吹き起り、山のような大浪おおなみが押し寄せて来そうな気がしました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
ジムは、爺さんの前に小さな青い色の卵をみっつつかみ出しました。それをみるとミル爺さんは
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
其を持つて、卓子テエブルに帰つて来るに、お嬢さんの姿は、こしもとみっツの黒い中に隠れたんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みずかそれを結んだとも覚えぬに、宛然さながら糸をにしたやうな、萌黄もえぎまるいのが、ちら/\ひとツ見え出したが、見る/\くれないまじつて、廻るとむらさきになつて、さっと砕け、みっツに成つたと見る内、ツになり
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
川はみっつの瀬を一つに、どんよりと落合おちあつて、八葉潟やつばがたの波は、なだらかながら、やっつに打つ……星のうずんだ銀河が流れて漂渺ひょうびょうたる月界にらんとする、あたかかたへ出口のところで、その一陣の風に
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)