一銚子ひとちょうし)” の例文
枕もとに松籟しょうらいをきいて、しばらく理窟も学問もなくなった。が、ふと、昼飯ひるぜんに、一銚子ひとちょうし添えさせるのを言忘れたのに心づいて、そこで起上たちあがった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
済みやしないよ、七皿のあとが、一銚子ひとちょうし、玉子に海苔のりと来て、おひけとなると可いんだけれど、やっぱり一人で寝るんだから、大きに足が突張つっぱるです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目立たないように一銚子ひとちょうし附いて出ると、見ただけでも一口めそう……梅次の幕を正面へ、仲の町が夜の舞台で、楽屋の中入なかいりといった様子で、下戸げこまでもつい一口る。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と謹んで色には出ぬが、午飯ひる一銚子ひとちょうし賜ったそうで、早瀬は怪しからず可い機嫌。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なつかしい姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、いよいよ後暗うしろめたさに、あとねだりをなさらないなら、久しぶりですから一銚子ひとちょうし、と莞爾にっこりして仰せある、優しい顔が、まぶしいように後退しりごみして、いずれまた
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人で、あり冬籠ふゆごもりに貯えたようなくだんのその一銚子ひとちょうし
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)