一揺ひとゆす)” の例文
旧字:一搖
それを一揺ひとゆすりしてみた七兵衛は、行きがけの駄賃としてはくっきょうのもの、抜からぬかおで背中に載せると、燈籠の闇にまぎれてしまう。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、ふね一揺ひとゆすれるとおもふと、有繋さすが物駭ものおどろきをたらしい、とも五位鷺ごゐさぎは、はらりとむらさきがゝつた薄黒うすぐろつばさひらいた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その内に彼はかついだ岩を肩の上で一揺ひとゆすり揺ってから、人のいない向うの砂の上へ勢いよくどうと投げ落した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで内証で涙を払うのかと偲うと、肩に一揺ひとゆすり、ゆすぶりをくれるや否や、切立きったての崖の下は、つるぎを植えたいわの底へ、真逆様まっさかさま。霧の海へ、薄ぐろく、影が残って消えません。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)