奥方は今を時めく老中、酒井左衛門尉さかいさえもんのじょうの息女で、一も二もなく権門けんもんの威勢に押されている土佐守は、こんな野蛮で下品で、そのくせ滅法可愛らしい娘を、見たことも想像したこともありません。