私はその何分かの間、独り前朝の遺臣たる名士と相対していたのみではない。又実に支那近代の詩宗、海蔵楼詩集かいぞうろうししゅうの著者の謦咳けいがいに接していたのである。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)