これは水上滝太郎みなかみたきたらう君の「友はえらぶべし」の中の一節である。僕はこの一節を読んだ時に少しも掛値かけねなしに瞠目だうもくした。水上君の小説は必ずしも天下の女性の読者を随喜ずゐきせしめるのに足るものではない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)