三宅坂の松平信明まつだいらのぶあきの屋敷を訪れたが、折悪しく、信明はその前夜、代々木の別業しもやしきへ移って静養中ということなので、すぐ引っ返して、そこからほど近い麹町の方へ馬を飛ばした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)