それは「爛柯亭」と記した奎堂伯けいどうはくの書で、「御賜鳩杖おんしのはとのつえ」の関防がしてあるのだが、「奎堂」が誰であるかも知らない幸子は、ただ「爛柯亭」の三字を読んだだけであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)