帰り路は山越しに熱海あたみに出た。坂口屋弥兵衛さかぐちややへえ方に一泊した。ここでまた驚くべき事実を発見した。ここに謎の人が泊り合せて虫の息でいるのであった。それは七化の小紋三という旅役者であった。
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)