緑の水の上の、入日を受けた大山の影繪シルエツトは眞に一個の乾闥婆城フアタア・モルガアナであつた。その赤と云つても單調の赤ではない。燈火に照らされた鮮かな自然銅鑛の赤である。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)