頭梁とうりょう)” の例文
「——あれから間もなくお店を出たんだけど、梶平さんの旦那の世話で、阿部川町あべかわちょうのなんとかいう頭梁とうりょうの家へ住込みではいったそうよ」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そもそも彼が今日の威力を得たことも、必ずしも蛮勇と僥倖ぎょうこうとのみは言えない——ドコかに一片の至誠の人を打つものがあり、多少ともに人を御する頭梁とうりょううつわがあればのことだ。
化物の頭梁とうりょうだ。と思って見ていると湯槽ゆぶねうしろでおーいと答えたものがある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余にさきんずる十数年以前より基督教を信じしかも欧米大家の信用を有し全教会の頭梁とうりょうとして仰がるる某高徳家は余を無神論者なりといえり、余は実に無神論者にあらざるか、名を宗教社会に轟かし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
すぐ頭梁とうりょうの侍が来た。職方目付しょくかためつけも駈けつけて来た。そして
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっしが十八の年のことでした」と猪之は云った、「頭梁とうりょうのうちに娘が二人いるので、近所の女の子がよく遊びに来るんです」
一人は相模屋さがみや吉兵衛という武具屋、これは道場で使うめん籠手こてや竹刀の修理新調を扱っている。一人は大工の頭梁とうりょうで、道場の一部を直す相談である。
主計は忙しい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おれか幸太か、どっちか一人はこの土地を出なくちゃあならないんだ、そして幸太が頭梁とうりょうの養子ときまったからには、出てゆくのはおれとわかりきっていたんだ
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そいつはおいらも知らねえが、茅町二丁目に杉田屋てえ頭梁とうりょうがあった。そこの若頭梁がよく出入りしていたっけよ」男はこう云っておせんのほうを眺め、ふと唇をゆがめて妙な笑いかたをした
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)