きず)” の例文
鼻の上に爪痕があるとか、掻ききずとか、頸を絞めつけたあととか、とにかく、そうした痕跡がなければならんわけです
見開いた眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
いや、船長、このボルク号の艦首は、ひどくこわれているのです。へさきのところに何物かをぶっつけたきずがあります。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それだのに、此の人に逢っていると又昔のように、向うですげなくすればするほど、自分のきずを相手にぎゅうぎゅうしつけなくては気がすまなくなって来そうだ。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その鼻は、お茶わんの中をつくほど高く、のめっていた。長い長いせた青い顔、額に深い大きなきずあとがあって、そのために片っぽの眼がつりあがり眼玉が飛出している。
濡紙を取って呼吸を見るとパッタリ息は絶えた様子細引を取って見ると、咽喉頸のどくびに細引でくゝりましたきずが二本付いて居りますから、手のひらで水を付けてはしきりに揉療治を始めました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
首の所は、よくは分らぬが、どうやら、められたきずが紫色になっているらしい。
D坂の殺人事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ヤングなら背中に鞭のきずが付いていても誰も気付かないでしょうし、妾も自分でいじめられる気持ちよさを知っていたんですからね……イイエ、音なんかいくら聞こえたって大丈夫よ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)