畔路あぜみち)” の例文
静子は小妹いもうと共と一緒に田の中の畔路あぜみちに立つて、紛帨はんけちを振つてゐる。小妹共は何か叫んでるらしいが、無論それは聞えない。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もとより慣れぬ徒歩かちなれば、あまたたび或は里の子が落穗おちぼ拾はん畔路あぜみちにさすらひ、或は露に伏すうづらとこ草村くさむら立迷たちまようて、絲より細き蟲のに、覺束なき行末をかこてども、問ふに聲なき影ばかり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
頃は夏の最中もなか、月影やかなる夜であつた。僕は徳二郎のあとについて田甫たんぼに出で、稻の香高き畔路あぜみちを走つて川のつゝみに出た。堤は一段高く、此處に上れば廣々とした野面のづら一面を見渡されるのである。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
沼地がある——其処には蘆荻の風に騒ぐさまが見られた。不図、二町とは離れぬ小溝の縁の畔路あぜみちを、赤毛の犬をれた男が行く。犬が不意に駆け出した。男は膝まづいた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)