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甘藷
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さつま
「そんでも
俺家のおとつゝあ
甘藷喰つたなんてゆふんぢやねえぞつて
云つたんだ」
與吉は
媚びるやうな
容子でいつた。
甘藷の
蔓もかえさねばならぬ。
陸稲や
黍、
稗、大豆の
中耕もしなければならぬ。
二番茶も
摘まねばならぬ。お屋敷に
叱られるので、東京の
下肥ひきにも行かねばならぬ。
「
俺らあ
家で
甘藷くつたなんてゆはねえんだ」
甘藷を
手に
持つて
怖づ/\いつた。
彼は
只嬉しかつたのである。
品川堀に沿うて北へ
歩む。昨日連判状を持って来た
仲間の一人が、かみさんと
甘藷を掘って居る。
最早
早生の
陸稲も蒔かねばならぬ。何かと云う内、
胡瓜、
南瓜、
甘藷や
茄子も植えねばならぬ。
稗や
黍の秋作も蒔かねばならぬ。月の中旬には最早
大麦が色づきはじめる。
「
甘藷喰たなんていふんぢやねえぞ」
與吉を
警めた。
勘次は
彼の
大豆畑の
近くに
隣の
主人の
甘藷畑とそれから
其の
途中に
南瓜畑があつたので、
他の
畑のものよりも
自然にそれを
盜つた。