鹿角かづの)” の例文
鹿角かづの郡のユルギがあり、福島県では石城いわき郡のイルギ、最上もがみ会津あいづ相州そうしゅう浦賀等のユルギのほかに、飛んで隠岐おき五箇浦ごかのうらのエリリがある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
陸中の国でありながら秋田県に加わっている鹿角かづの郡では、狐つきのことをモスケヅキというそうだ。また、巫女みこのことをイタコという。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
鹿角かづの打ったるかぶとを冠り紺糸縅こんいとおどしよろいを着、十文字のやりっさげて、鹿毛なるこまに打ちまたがり悠々と歩ませるその人こそ甚五衛門殿でございました」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中でも北津軽、南津軽、岩手、鹿角かづの、仙北、最上もがみ、村山の諸郡は蓑の王土と呼んでいい。新潟県、富山県などにも作り方に面白いのがあるが、さまで美しくはない。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
取わけ竹山に想像を費さしたのは、横浜の桟橋に毎日行つて居た事があるといふ事と、其処の海員周旋屋の内幕に通暁して居た事であつた。鹿角かづの郡の鉱山は尾去沢も小坂もよく知つて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「されば、あの鹿角かづの前立まえだて打ッたるかぶとと、白糸おどしのよろいには、すぐる年、姉川あねがわの合戦で、しかと、見覚えがござりまする。——彼こそ、家康の股肱ここうしん、本多平八郎にちがいありませぬ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち鹿角かづの郡の湯瀬温泉附近などにいうカヌカであり、これは湖の堆積物に成るか、またはペネプレエンの遺物かと考えられている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
頭領と見える四十五六の男は、さすがに黒革の鎧を着、鹿角かづのを打ったかぶとを冠り、槍を小脇にかい込んでいた。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
藁沓では先を細かく丁寧に編んだのがあって、少しも荒々しい仕事ではありません。似ているようでいて隣の羽前や陸中のものと異ります。鹿角かづの郡の花輪はなわ附近も蓑が立派で形に力あるものを作ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかし啼声のヒョウロローは赤ショウビンでなければならない。鹿角かづの郡などでも体が赤いからナンバンドリだといっている(内田武志君)。
同じ秋田県でも北隅の鹿角かづの郡あたりでは、所謂いわゆるニヨチミは同じ日に、子供が相撲をとって遊ぶことのようにも解せられている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿角かづの郡などの最も草深い田舎をあるくと、はなやかな笑い声よりもさきに目に入るのは、働く女たちの躑躅つつじ色、牡丹ぼたん色などのかぶり物である。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その言葉が村によりまた家によって、色々変っているのが私には面白い。北秋田の扇田おうぎたあたりから、鹿角かづの郡にかけてはポーポーといっていた。
鹿角かづの毛馬内けまないあたりでは、豆粢まめしとぎの柔かなものをジンダと呼び、正月十六日にはカユノシルの中へ、これを焼いて切って入れた(ひだびと九巻一号)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この鹿角かづのの例ともっとも近くて、さらに今一段とおかしいものが、ここからもっとも遠くへだたった九州のほうにも、二つまでもう採集せられているのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
盛岡は鹿角かづの地方とともに炉をヒビトというと報ぜられているが、是もその近傍にはシビトが控えており、さらに南へきて『遠野とおの方言誌』にはスビト、東山地方ではスブト
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
秋田県の鹿角かづの地方でこの草をマンジュシカシカと呼ぶのも、マンジュは不明だがシカシカはすかな(酸模)という草の方言だから、やはり酸いという所から付けた名である。
アキビアブラ 秋田県鹿角かづの地方では、「あけび」の種子から油をしぼって食用にした。小正月には特にこの油をもって附け揚げをこしらえて仏さまに上げた(民俗学二巻二号)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そとが浜風」「けふのせばぬの」の二書は、この八月初めから二ヶ月の旅中記であるが、彼はその間に津軽を一巡し、再び引っ返して北秋田鹿角かづのから、嶺を東に越えて北上川の岸を
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿角かづの郡案内』という書には、秋田出身の一新聞記者、三戸さんのへ郡から鹿角を越えて帰省する途中、湯瀬ゆのせ温泉附近の小山の嶺に休んで酒を飲み、次のような俗謡をうたったことが記してある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
秋田・岩手二県のさかい鹿角かづののある村に行われている話などは、これから考えると今少し古いものかも知れぬが、衣服の好みがもう変ってきたので、話が少しばかりわかりにくくなっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それから鹿角かづの郡の宮川村、または南部の野辺地のへじでも盛岡でも、アチャトデタカと啼くという人が多かった。即ち小鍋隠しのおかしな昔話も、基づくところはこの鳥の啼く声であったのである。
白餅という名は東海道の諸国から紀州まで、九州でも北岸の島々ではシラモチと謂い、阿蘇あその山村ではシイラ餅と謂っているとともに、一方秋田県の鹿角かづの地方などにもシロコダンゴという名がある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
サシドリ 鹿角かづの