頬紅ほおべに)” の例文
白粉おしろいをつけ、頬紅ほおべに口紅くちべにをつけ、まゆずみを引き、目のふちをくま取り、それからきえちゃんの芸服げいふくを着せ、きぬ三角帽さんかくぼうをかぶせました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
淡々と、田舎なまりをまぜてひとごとのようにいうのだが、頬紅ほおべにをこくぬったひろ子の化粧からさえ、彼女の心がもう決っているのをミネはさとった。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
女の方は白粉おしろい頬紅ほおべにで化粧をこらし、髪はその頃流行の耳かくしにい、飛模様とびもようの着物に錦襴きんらんのようなでこでこな刺繍ししゅう半襟はんえりをかけ甲高かんだかな調子で笑ったりしているそば
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帳場に近い衝立の陰には、厚化粧をして頬紅ほおべにを塗った怪しげな女が、愛想笑いをしながら折々泉原の方を振返っていた。女は長い巻煙草シガーを細い指先に挟んで、軽い煙をあげている。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
頬紅ほおべにを眼の下の方へひろげさせたり、いろいろにして見たのだけれども、矢張どうしてもうまい工合に胡麻化ごまかし切れないので、幸子はこの座敷へ這入った時からヒヤヒヤしていたのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女はまだ見た所、二十はたちを越えてもいないらしい。それが壁へ貼った鏡を後に、絶えず鉛筆を動かしながら、せわしそうにビルを書いている。額のき毛、かすかな頬紅ほおべに、それから地味な青磁色せいじいろの半襟。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二階い上って寝室のベッドの上でしばらく動悸のしずまるのん待ってから、やっと起き上って、顔色隠すために頬紅ほおべに少し濃いめにつけて、白葡萄酒一杯飲んで、思い切って降りて行きましてん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
頬紅ほおべにを濃く着けた方がよいように思えた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)