随意まま)” の例文
旧字:隨意
手を伸ばすか、どうにかすれば、水差に水はあるはず、と思いながら、枕を乗出すさえ億劫おっくうで、我ながら随意ままにならぬ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そういう手前こそ何者じゃ! 厳寒であろうと深夜であろうと、用事あればどこへ参ろうと随意ままじゃ! 他人ひとを咎めるに先立って自ら身分をなのらっしゃい!」
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鯉七 忘れたか、つりがねがここにある。……御先祖以来、人間との堅い約束、夜昼三度、打つ鐘を、彼奴等あいつらが忘れぬうちは、村は滅びぬ天地の誓盟ちかい姫様ひいさまにも随意ままにならぬ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れに私の商売なるものが——商売というのも烏滸おこがましいが、売文に依って口過ぎを為し——それも通俗物の小説などで——生活くらしを営んで居ったので、何処へ住もうと随意ままであった。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ちゃんと養母に約束した、その時の義理がありますから、自分じゃ、生命いのち随意ままにはなりやしない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
随意ままにしやがれ!」と粂太郎敵のゆだんにパッと蹴る。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかもおまえが(生命いのちかけても)という男だもの、どんなにおめでたかったかもしれやアしない。しかしどうもそれ随意ままにならないのが浮き世ってな、よくしたものさ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もどかしき垣を中なる逢瀬おうせのそれさえも随意ままならで、ともすれば意地悪き人の妨ぐる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
随意ままにしょうでは気迷うぞいの、はて?……)
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おの随意ままにぞ振舞いける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)