鑑識めがね)” の例文
織娘の中で心掛けの善いおくのと云うが有りまして、親父おやじ鑑識めがねでこれを茂之助に添わせると、いことにはたちまち子供が出産できました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それが悪いのか、銭形の、——弥三郎殺しを新助の仕業と思ったのは俺の鑑識めがね違いだったが、今度ばかりは外れっこのねえ証拠がある」
清之介君は支配人の鑑識めがね通り忠実な良人だった。妙子さんも、富裕ゆたかな家庭に育った末娘にあり勝ちの我儘を除いては、申分ない妻女だった。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「すまねえが親分の鑑識めがね違えだ。」味噌松が仲へはいった。「ま、考えても御覧なせえ。お神さんの腕力ちからであのまさかりが——。」
万人の鑑識めがねかなってこそ天下の名画と申すことが出来る。——この八景砂子が淡い。持ち返って手を入れたらどうじゃな
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
言ふ迄もなく鑑識めがね自慢で、値段よりも自分の眼で買つたものだけに、素性すじやうの立派なのに比べて、金は余り掛けてゐない。
「ゆうべ道之進と会った。あれをおまえの良人に約束したのは兄の鑑識めがね違いだった。精しいことは云えないが、ゆうべは道之進を斬るつもりだった」
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
見込んで世話した人の鑑識めがねを裏切るようなことはないつもりだと、自信はしているけれども、お松はどうしてもそれを承諾する気にはなれませんでした。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
犬商自身の鑑識めがねに叶った夫人——すなわち老夫人ではなくて、若い美夫人ばかりであったということに考え至れば、その時私の胸にも一種奇異な感じが起ったであろうが
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
さすがは多くの女ども、見飽きたまひし旦那の御鑑識めがねほどありてと、御容貌きりやうには誰も点の打人うちてなきに、旦那様も御満足の、その当座こそ二世も三世も、浮気はせまいと心の錠。
今様夫婦気質 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「えツ、それは無法、——いえなに、石原の兄哥の鑑識めがね違ひと言つちや惡いが、萬三郎が、あの女を殺すわけが御座いません」
軍之助は一刀流正派のながれを守るものとして先師の鑑識めがねにかない入婿して月輪を名乗っているのだが、剛柔兼備ごうじゅうけんび、よく微塵流の長を伝えて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「恐れながらそれはお鑑識めがねちがいにございます。ごらんのとおりの小足軽、なかなかもちましてさような……」
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
國藏はしきりに心配して大家さんへ届けたり、自身番を頼んだりぐる/\騒いで居りますると、文治郎の鑑識めがねたがわず、それっ切り仕返しにも来ませんでしたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一たびは小癪こしゃくにさわり、折あらばその虎之助なる者と立合ってみたい、老いぼれた父の鑑識めがねを我が新鋭の手練を以て打ち砕いてやるも面白かろうと、平生へいぜいはこんなに思っていたが
「誰か若い将校で、あなたのお鑑識めがねにかなつたのがございましたらと存じますが……」
それは人々の鑑識めがね次第——しからばいよいよ貴殿には、どうでも同道致されぬ気か?
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三輪の万七とお神楽の清吉はプリプリしておりますが、与力よりき鑑識めがねですることへ、文句の付けようもありません。
鑑識めがねちがいではないか、どうかそうあってくれればよいがと、御覧のとおり、何度見直したか知れぬ。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以後御別懇に願いたい、ついては母も老体でわたくしが内職にくことが出来ませんから、文治郎殿の鑑識めがねかなった女房を世話をして下さい、成るべくお親戚みよりなれば尚更忝けない
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
犬養氏が長年の間、閑暇ひま鑑識めがねにまかせてひ集めた書物が、二階の一にぎつしり詰まつた時、氏は目尻を皺くちやにして喜んだが、それを見てたつた一人そつと溜息をいた人がある。
三輪の萬七とお神樂かぐらの清吉はプリプリして居りますが、與力の鑑識めがねですることへ、文句の付けやうもありません。
私はもとは此のうちへ機織に雇われた奉公人を、うやって若旦那に添わして下さるとは冥加至極のこと、お父さんのお鑑識めがねにかない此の家の女房に成り子供まで出来ましたから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
吉宗の鑑識めがね、いやなに、源蔵の礼ごころじゃ。このうえともに、な、精勤せいきんいたせ。頼むぞ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
錢形の親分さん、燕女つばめは人なんか殺せる娘ぢやございません。三輪の親分の鑑識めがね違ひと言つちや濟みませんが、あれは何んかの間違ひに決つてをります。どうか、あの娘を
実は鉄斎の腹の中で技倆うでからいっても勝つべき若者——婿むことして鑑識めがねにかなった諏訪栄三郎という高弟がひとりちゃんと決まっていればこそ、こんな悪戯いたずらをする気にもなったのだろうが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人も通わぬ山奥でむざ/\相果あいはてるとは、なんたる不孝でございましょう、くれ/″\もお許し下さいまし、たま/\御両親のお鑑識めがねにて、末頼もしき夫を持ちましても、運つたなくして重なる不幸
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「へ、へッ、千慮の一失って講釈師は言いますぜ、あの時ばかりは親分の鑑識めがねも曇ったね」
鑑識めがね通りだ、はっはっは、彦御苦労だったのう。」と藤吉は哄笑して
「へ、へツ、千りよの一失つて講釋師かうしやくしは言ひますぜ。あの時ばかりは親分の鑑識めがねも曇つたね」
「八五郎兄哥あにいにはかなはねえよ。俺は自害に違ひないと言ふと、自分で自分ののどを突いて、手の汚れない筈はないと斯う言ふのだ、——さすがは錢形の親分の仕込みで、大した鑑識めがねだよ」
當主三右衞門は幸ひ赤塚家先代の鑑識めがねかなつて當家の婿養子となり、赤塚家を繼いで三人の子をまうけましたが、赤塚家の家督を爭つた相手は、それを根に持つて、事毎に當家に仇をし
「親分の鑑識めがねは曇らねえ、確かにありますぜ」