きん)” の例文
お杉の方に気がねでもあるかのごとく、もじもじと京弥が言いもよったので、退屈男は千きんの重みある声音こわねで強く言いました。
「もうそんなかけ声を出さなくてもよいようになった、という文句には、まさに千きんの重みがありますわい。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
今川橋いまがはばしきは夜明よあかしの蕎麥掻そばがきをそめころいきほひは千きんおもきをひつさげて大海たいかいをもおどえつべく、かぎりのひとしたいておどろくもあれば、猪武者いのしゝむしやむか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それと、一緒にぐ、ぐ、ぐ……と、千きんのおもりを一時に吊り上げられたように、舷側げんそくが傾いて行った。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
しかし、あそこに、徳川夢声先生という珍優が一枚加わると、千きんの重みとはこのことである。
戦後新人論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そんな下品なことは言いませんが、ぐっと恨みをこめて見上げるまなざしには、まさに千きんの重みが加わって、大象だいぞうをさえつなぐといわれる女髪にょはつ一筋、伊賀の若様、つに起てない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きんの重味を示しながら断乎と言い放って、何かやや暫し打ち考えていましたが、不意に言葉を改めると、猪突に杉浦権之兵衛へ命じました。
あれが、恋は弱い者を強くし、強い者を弱くする、弱い娘の口からこの強い言葉が吐き出されたばかりに、それには、強い壁辰のこころを弱くするだけの、まさに千きんの重みがあったのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)