釣洋燈つりランプ)” の例文
おどされてわれはその顔を見たり。舞台は暗くなりぬ。人大方は立出たちいでぬ。寒き風じょうに満ちて、釣洋燈つりランプ三ツ四ツ薄暗きあかりすに心細くこそなりけれ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤い釣洋燈つりランプの光はションボリと家の内を照していた。台所の方では火が燃えた。やがてお倉は焚落たきおとしを十能に取って、長火鉢の方へ運んだ。そのうちにお延やお鶴も起きて来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
釣洋燈つりランプがどうしたことでか蚊帳の上に落ちて、燃えあがったなかに、あたしは眠っていたので、てっきり焼け死んだか、でなければ大火傷おおやけどをしたであろうと、誰も咄嗟に思ったそうだが
お杉の家では狭い茶室ちゃのまへ小さな釣洋燈つりランプけて夕飯をっていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
愛吉は神妙に割膝でかしこまり、算盤そろばんはじいている。間を隔てた帳場格子の内に、掛硯かけすずりの上で帳面を読むのはお夏で、釣洋燈つりランプは持って来て台の上、店には半蔀はんしとみを下してある。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後で、お雪は台所の方を済まして出て来て、夫と一緒に釣洋燈つりランプの前に立った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
店の真中まんなかへ二足三足、あかりさきへ、お夏は釣洋燈つりランプもとに立ち寄った。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう言いながら、ボンヤリ釣洋燈つりランプの側に立った。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とその拍子に風のなぐれで、奴等の上の釣洋燈つりランプがぱっと消えた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何か、灯ッて、そのくすぶり返った釣洋燈つりランプのことかい。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)