金蔵きんぞう)” の例文
旧字:金藏
見ると隣家の金蔵きんぞうであった。白髪頭しらがあたまがしかもはげあがって、見ちがえるほどじじになっていた。向こうでも自分の老いたのに驚いたようである。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「今時にも、熊坂長範くまさかちょうはんみたいなものがいるとみえ、あの大坂城へ、大八車を曳きこんで、お金蔵きんぞうだのお手道具だのを、空巣稼あきすかせぎした奴があるそうじゃ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぽんと背中せなかをたたかれて、つづけにかされたのが、柳湯やなぎゆで、金蔵きんぞうがしゃべったという、橘屋たちばなやの一けんであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そう申しては口幅っとうございますが、先ずこう申す五郎助七三郎が筆頭で、それから夜泣よなきの半次はんじさかずり金蔵きんぞうけむり与兵衛よへえ節穴ふしあな長四郎ちょうしろう。それだけでございます
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
これは松本が保さんに話した事で、保さんはまた戸沢とその弟星野伝六郎とをもっていた。戸沢の子米太郎よねたろう、星野の子金蔵きんぞうの二人はかつて保さんのおしえを受けたことがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
柘榴口ざくろぐちからながしへ春重はるしげ様子ようすには、いつもとおりの、みょうねばりッからみついていて、傘屋かさや金蔵きんぞう心持こころもちを、ぞッとするほどくらくさせずにはおかなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かべみみありよ。さっき、とおりがかりにんだ神田かんだ湯屋ゆやで、傘屋かさや金蔵きんぞうとかいうやつが、てめえのことのように、自慢じまんらしく、みんなにはなしてかせてたんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)