金剛寺坂こんごうじざか)” の例文
この、小石川こいしかわ金剛寺坂こんごうじざかのあたりは、上水にそってが多い。枝の影が交錯して、畳いっぱいにはっている。ゆれ動いている。戸外は風があるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
金剛寺坂こんごうじざか笛熊ふえくまさんというのは、女髪結おんなかみゆいの亭主で大工の本職を放擲うっちゃって馬鹿囃子ばかばやしの笛ばかり吹いている男であった。按摩あんま休斎きゅうさいは盲目ではないが生付いての鳥目とりめであった。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから先は、後方うしろをも振向ふりむかず、一散走いつさんばしりに夢中で駈出かけだしたが、その横町を出ると、すぐ其処そこ金剛寺坂こんごうじざかという坂なので、私はもう一生懸命にその坂を中途まで下りて来ると
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
代助はもんた。江戸川迄ると、かはみづがもうくらくなつてゐた。彼は固より平岡をたづねる気であつた。から何時いつもの様に川辺かはべりつたはないで、すぐはしわたつて、金剛寺坂こんごうじざかあがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
丁度この見晴しと相対するものはすなわち小石川伝通院でんづういん前の安藤坂あんどうざかで、それと並行する金剛寺坂こんごうじざか荒木坂あらきざか服部坂はっとりざか大日坂だいにちざかなどは皆ひとしく小石川より牛込赤城番町辺あかぎばんちょうへんを見渡すによい。
金剛寺坂こんごうじざか
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
電車通を行くことなほ二、三町にしてまた坂の下口おりくちを見る。これすなわち金剛寺坂こんごうじざかなり。文化のはじめより大田南畝の住みたりし鶯谷うぐいすだには金剛寺坂の中ほどより西へ入る低地なりとは考証家の言ふところなり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)