)” の例文
花和尚は、その夜の木賃宿で、ひなびた別宴を設けさせた。お互い心ゆくまでと、しつ酌されつはしていたが、さて離愁のはらわた、酔いもえず
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源太郎はされた酒の黄色いのを、しツぽく台の上に一寸見たなりで、無器用な煙草を止めずにゐた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
とうせ、水稼業みずしょうばいにはいった体じゃねえか。いい加減に、世間なみになりねえ。さ、盃をやろう。そして、きげんを直して旦那に一つしてくんねえ。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お菊ちゃんは、自分は杯へ手も触れないくせに、人へすのは好きだった。酔うと、武市はたしなむ古詩を微吟びぎんし、桂は、即興の都々逸どどいつを作って見せたりした。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一箇の杯もまた天地の前兆と見ることができる。これはやがて魏の曹軍が地に捨て去る残骸のすがただ。先生、べつな酒盞をとって、それがしにし給え」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といっても、あせッて事を仕損じちゃいけませんから、しばらくはしつ酌されつ。そして試しに、卓のおはしを下へ落としてごらんなさい。いいえ、ですよ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その代りに、きょうはよい目に遭わせてやろうと思い、迎えにやったわけだが、よく来てくれた。まあ、坐るがいい。——おい女輩おんなども、この人に杯をせ、杯を」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その庄左衛門が、杯を洗って、旗本の中の一人へすと、美服につつまれた色の小白い織田雄之助は
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内蔵助は、発狂したように、手をって笑った。ひどく笑い出すと、この頃のお大尽は、手を拍っただけではやまない。酒杯さかずき仰飲あおってやたらにそこらの人間へす。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又右衛門は、しかと、杯を持ち直して犬千代へした。無量な感慨が犬千代のほうにもある。最初のうちは聟しゅうととなる者は、こう二人のはずであった。縁がなかったのだ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、屠蘇をわし、吉兵衛へも、みずからして、さて、正月はこれからというように
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黙ってし、黙って受け、九叔も話のがないように、むっそり飲んでいるほかはない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、杯を持って、ふなべりから手をのばし、大川の水を杯洗はいせんにしてさっとしずくを振って婆へした。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふしぎといえばふしぎ、飽くまで縁である。このうえはお互いに清々すがすがときれいに、ただ侍同志のつきあいでありたい。犬千代も祈った。又右衛門もそう謝しながら杯をした。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
杯が小さいと見えて、ほかの大きなものしても、あッけないくらいなものだった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長は、手の杯を、小姓を通じて信盛へしながら、唐突とうとつにこう云い出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはいかな事。した杯、取らぬ法やある」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斧四郎は、重箱じゅうをひらかせて、杯をしたが
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不死人は、まず、小次郎に、酒をした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と不死人に、して
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼へした。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)