追風おいて)” の例文
それと同時に、機は追風おいての方向にさっと身をひるがえすと、猛烈な勢いで急上昇をはじめたと見え、体の中心がぐんぐん下へ引ずりおろされて行くような気がした。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
富士川をのぼる舟は追風おいてはらんだ時はかえって、下る船よりも速いことがあります。福士からこの船に乗った兵馬と七兵衛とがんりきと三人は、早くも甲府に着きました。
「いいあんばいに追風おいてになりました。一直線にゆくことができます」とモコウはいった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
これいわゆる追風おいてけ、流を下るにモーターを使うがごときもので、是ではもはや相手方に口をきかせる余地もなく、その功を収むるの易々いいたるは当然のように思われる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
十六人は、感激のなみだの目で、白雪にかがやく霊峯れいほう富士をあおぎ、船は追風おいての風に送られて、ぶじに駿河湾するがわんにはいった。そして午後四時、赤い夕日にそめられた女良めらの港に静かに入港した。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)