かが)” の例文
それでまた屁ッぴり腰をして樽の上にかがみ、そして車からふりおとされないために顔を真赤にして一生懸命荷物台に獅噛しがみついた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
反絵はんえは閉された卑弥呼ひみこの部屋の前に、番犬のようにかがんでいた。前方の広場では、兵士つわものたちが歌いながら鹿の毛皮をいでいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
父親は腕を伸ばし棒を廻しながら舞い、息子は地にかがまり、其のまま何ともいえない恰好かっこうで飛び跳ね、此の踊の画く円は次第に大きくなって行った。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
寺まうで墓まうでびと、たまさかにかがみ通れど、誰ひとり振りは仰がず、誰ひとり眼にもとめねば、ただ二木ふたき立てるのみなる、榧と栗さびるのみなる。
作法が終ると、老主人ははかまって、厚い綿入羽織を着て現われた。炉にかじりつくようにかがみ、私たちにも近寄ることを勧めた。そして問わず語りにこんな話を始めた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
杉本はかがんで子供の三尺をしっかり結んでやる。お前は教室に行ってよしと言って、その部屋から外へ出してやった。それから大人たちの好奇心を満たさねばならなかった。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
けれど、彼女は舳先へさきの方にかがんだまま、ただそのつぶらなを二三度瞬いたきりである。
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そんな時の私達は、きっと、えりをかき合わせ、眉を寄せて寒空さむぞらを見上げているに相違ありません。庭の捨て石やかがいしのもとに植えられた福寿草は、よく自然の趣を見せてくれます。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
というのは、この寮監先生、実は時折、手の甲のことで強情すねたりする生徒を、ぴしゃり! とやる罪のない癖があるのだ。そこで、来るなと思ったら、時を測って、ぴょこりとかがむ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
蟇口がまぐちから三十銭出すと、手に握って持った。歩きながら、ワザと口笛をふいた。そしたら女は顔を出す、と思った。前まで来たが、出てこなかった。龍介は往来でちょっとかがんで中をのぞいてみた。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
正三は純子の眼を外らしながら、縁先にかがんで一政を見た。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母は前へかがむようにして「重たいがな、これ、針でつくえ。」肩の子を見向きながらいった。子は再び静になった。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
寺まうで墓まうでびと、たまさかにかがみ通れど、誰ひとり振りは仰がず、誰ひとり眼にもとめねば、ただ二木ふたき立てるのみなる、榧と栗さびるのみなる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はて、らんかんの下にでもかがんでるかと、あの長え橋を三べんとこ往復しやした。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
反絵は卑弥呼の傍へかがむと、荒い呼吸を彼女の顔に吐きかけて、彼女の腰と肩とに手をかけた。しかし、卑弥呼は黙然として反耶の死体を眺めていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
紅葉を焚いて、ふすふすと白うくすぼる煙のかげで、あつたかいぞと私がかがめば、妻も双手もろてをかざして蹲む。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
長羅は剣のさきで鹿の角を跳ねのけると、卑弥呼を見詰めたまま、飛びかかる虎のように小腰こごしかがめて忍び寄った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
だが、私たちはまた道端のやや高畦たかあぜの斜面へぽつぽつと凭りかかったり、かがんだりした。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
二人もどうやら落ちついて来た。紅葉でも焚いて見ようかと、私が云へば、妻も素直に、焚いて見ませう、寂しいからと庭に下り立つ。竹の箒で私が掃けば、かがんで妻が拾ひ集める。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このピアノ中古ちゆうぶるぞとよ。塗りみがき、うつくし黒し、大きなりしつにそびやぐ。かうがうしこのピアノ、立ち添ひて、かがみ見て、蓋をひらき、鍵たたき見て、見も飽かず終日ひねもすありける。
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
このピアノ中古ちゆうぶるぞとよ。塗りみがき、うつくし黒し、大きなりしつにそびやぐ。かうがうしこのピアノ、立ち添ひて、かがみ見て、蓋をひらき、鍵たたき見て、見も飽かず終日ひねもすありける。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
爪立つまだち、かがんでくるりとやるかと思うと、ひょくりと後足あとあしびっこをひく。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
かがんで庄亮が構えた、その巨大な茎の中ほどを握って。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
かがみてぐはなにごとか
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)