赤地錦あかじにしき)” の例文
本堂にはお説経の壇が出来て、赤地錦あかじにしきのきれが燦爛さんらんとしている。広い場処に、定連じょうれんの人たちがちらほらいて、低い声で読経どきょうしていた。
また関興やそのほかの旗本は、みな天逢てんぽうの模様のある赤地錦あかじにしき戦袍せんぽうを着、馬を飛ばせば、さながら炎が飛ぶかと怪しまれた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて清盛は、赤地錦あかじにしき直垂ひたたれに、黒糸縅くろいとおどしの腹巻、白金物しろかなもの打った胸板むないたを着け、愛用の小長刀こなぎなたをかいばさんだ物々しい装立いでたちで、側近の貞能を呼びつけた。
ふたりは、そう解して、悲涙にくれたが、於松はすこしも頓着とんちゃくなく、白装束を着て、その上に、それだけは華やかな赤地錦あかじにしきの陣羽織に、唐織からおりはかまをはいた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操は考えているふうであったが、やがて左右に命じて、秘蔵の赤地錦あかじにしき戦袍ひたたれを取寄せ、それを広苑ひろにわの彼方なる高い柳の枝にかけさせた。そして武臣の列に向い
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俯目ふしめ兄者人あにじゃびとのほうを見てありましたところ、母うえが着せてあげた赤地錦あかじにしき小袖こそで萠黄縅もえぎおどしよろい、太刀のこじり、いつまでも、石のように、ひれ伏してありましたが
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十一月のしもの朝、義経は、赤地錦あかじにしき直垂ひたたれに、萠黄縅もえぎおどしよろいをつけ、きょう西国へ下るとその邸を出て、妻の静、その老母、その他、足弱あしよわな者たちを、先へ立たせ、わずかの精兵を従えて、御所の門前に
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)