たと)” の例文
たとひ機会があつたとしても、知らない事の多い自分の最も知らない物は欧洲の音楽であるから一辞をも着け得べきで無いのは勿論である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
またそれらの階級に阿附あふする多数の学者教育者とかには、年輩の上から旧時代に属する人たちが多いのですから、そういう人たちはたとい憲法の精神に背き
女子の独立自営 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
たとひその当人はお気に召しませんでも、その心情はお察し遊ばしても宜いでは御座いませんか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
設我得仏 たとわれほとけを得んに
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
人の生血をしぼつてまでも、非道なかねこしらへるのが家業の高利貸が、縁も所因ゆかりも無い者に、たとひ幾らでも、それほど大事の金をおいそれと出して、又体まで引取つて世話を為ると云ふには
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ればこれもつたゞちに人口の減少を論じ仏蘭西フランス衰頽すゐたいを唱へるのは杞憂であつて、たとひ都会人の出産数は減少しても常に地方人がこれを補充するから都会の人口はむしろ加はるとも減る事は無い訳である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
お解りにはならないでせうが、お目に掛つて口では言ふにいはれない事ばかり、たとひ書けない私の筆でも、あれをすつかり見て下すつたら、ちつとはお腹立も直らうかと、自分では思ふのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)