)” の例文
そう独りちたとき、彼は立ちすくんだ。浪路のかくれ家の入口の戸が開く音がして、二ツの人影が、黒く、闇の中にあらわれたのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
また独りちながら御廐橋の四つ角を左に、新堀渡って、むなしく見世物小屋の雨に煙っている佐竹ッ原を横目に、トコトコと圓朝は歩いた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ひとった。スルト中村は背を円くしかしらを低くして近々と若崎に向い、声も優しく細くして
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「よし。あいつらのあとをおれがまたつけて行ってやろう。」そしてそちらへ向かって彼は大股おおまたに歩き出した。「降誕祭へはおれは行くまい。」と彼はまたひとりった。
... 不逞ふていな奴らではあるが、その点は実に感心ですよ」彼はこの時ふと柱時計を見て独りちた。「ところでもう四時間になる。至急報でやったんだから返事は来そうなもんだが」
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「とても駄目だ。」と独りちながら、唐紙を開けてひよろ/\と縁側へ出て来た。
父を売る子 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「このまんま死んで行ったら、さぞ好い気持ちだろうな。」彼はふとそんな事を考えた。「しかし、お前はもっと生きなければならんぞ」と彼は半ば自分をいたわるようにひとちた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
感激で満身を慄わせながら小圓太は、四谷から振出しの神田三河町の千代鶴という寄席まで独りちながら歩いていった。どこをどうどんな風に歩いていったか分らなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「降誕祭へは俺は行くまい。」と彼は又ひとつた。
と、大胆不敵な、この女装の剣者は、独りつ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)