血反吐ちへど)” の例文
「恐れ……恐多おそれおおい事——うけたまわりまするも恐多い。陪臣ばいしんぶんつかまつつて、御先祖様お名をかたります如き、血反吐ちへどいて即死をします。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其方そちらも早駕籠に乗ってみい。主水正は、まだ血反吐ちへどを吐かぬだけよいぞ……主水ッ! しっかりせい。予じゃ、対馬じゃ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
片手は土手の草に取つき、ずーと立上ったが爪立つまだってブル/\っと反身そりみに成る途端にがら/\/\/\と口から血反吐ちへどを吐きながらドンと前へ倒れた時は
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
毒薬には劇毒で飲むとじきに死ぬのも有ろうし、程経て利くのも有ろうが、かかる場合に飲んで直に血反吐ちへどを出すような毒を飼おうようは無いから、仕込んだなら緩毒
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
血反吐ちへどを吐いて死んだおやじや、けがらわしいおふくろを忘れることができない、立派な職人にならなくともいい、金も欲しくはない、けれども女房や子供には、どんなことがあっても
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ついここから二タ筋目の通りのある店家の内儀かみさんが、多分その亭主の手に殺されて、血反吐ちへどを吐きながら、お銀の家の門の前にのめって死んでいたという出来事があってからであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
同業者のこれにかかりては、逆捩さかねぢひて血反吐ちへどはかされし者すくなからざるを、鰐淵はいよいよ憎しと思へど、彼に対しては銕桿かなてこも折れぬべきに持余しつるを、かなはぬまでも棄措すておくは口惜くちをしければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貧しい肺病やみの学生が、血反吐ちへどをはいてのたうち廻っていた。酒に酔った不良性の男が、美しい女中を引張り込んで獣慾を遂げていた。凶器を手にした盗人が、窓の戸をこじあけて覗き込んでいた。
都会の幽気 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
喜兵衛は、勿論、血反吐ちへどをはいて、絶息してしまった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)