蚊幮かや)” の例文
そして単に薬餌やくじを給するのみでなく、夏は蚊幮かやおくり、冬は布団ふとんおくった。また三両から五両までの金を、貧窶ひんるの度に従って与えたこともある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かくの如くに反覆して雷火におびやされたので、抽斎は雷声をにくむに至ったのであろう。雷が鳴り出すと、蚊幮かやうちに坐して酒を呼ぶことにしていたそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兼ての手筈てはずに女の来てちよつとこちらへと案内するは、同じ二階の四畳半に網行燈あみあんどう微暗ほのくらく、の少き土地とて蚊幮かやらねど、布団ふとん一つに枕二つ、こりや場所が違ひませうと
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蚊幮かやの外に小さく燃えているランプの光で、独寝ひとりねねやが寂しく見えている。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)