藥罐やくわん)” の例文
新字:薬缶
「まだ其處そこつくるけえしちや大變たえへんだぞ、戸棚とだなへでもえてけ」勘次かんじ注意ちういした。卯平うへい藥罐やくわんいで三ばいきつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうだらうとも、五匁玉半分煙にして、空茶からちや藥罐やくわんで三杯もあけるのは、容易なことぢやあるめえと思つて居たよ。そんなに言ひにくいところを
小出氏は國民服の膝をきちんと折つて坐つて、壁の隅に置いてある藥罐やくわんの湯を柄杓で汲んで、煎茶をいれて、それを私等にすすめた。飮み干すと又注いで呉れた。蚊は相變らず多かつた。
横山 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
いつもの通り足音も立てずに、猫の如く臺所から上つたが、誰れも居ないので、其處の圓形の大火鉢の前に坐つて、何うかすると薄ら寒い初夏の夜を、眞黒に煤けた藥罐やくわんの上に兩手をかざしつゝ
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
われへ」卯平うへい蕎麥掻そばがきけてやつた。かれはさうしてさらあとの一ぱいきつしてその茶碗ちやわんんでんだ。藥罐やくわんかるくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大道の上に茣蓙ごさを敷いて、その上に大小樣々の金物、——金盥かなだらひやら、鈴やら、火箸やら、藥罐やくわんやら、錢やら、鍵やら、ありとあらゆるものを並べ、薄茶色の粉で磨いて
いでやつべかぢい火鉢ひばちそば與吉よきち藥罐やくわんけた。卯平うへい與吉よきちのするがまゝまかせた。卯平うへい比較的ひかくてき悠長いうちやう茶碗ちやわんはしぜた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)