薩張さっぱり)” の例文
何の因果で此様こん可厭いやおもいをさせられる事か、其は薩張さっぱり分らないが、唯此可厭いやおもいを忍ばなければ、学年試験に及第させて貰えない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
多分是を渡るであろう。もう話声も聞えぬ。何国どこで話ていたか、薩張さっぱり聴分られなかったが、耳さえ今は遠くなったか。
富「ヘエ、これは恐入りました、どうもちっともお帰りを知らんで、前後忘却致し、どうもなんとも誠にどうも、なん御打擲ごちょうちゃくですか薩張さっぱり分りません」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白い襯衣しゃつを手首で留めた、肥った腕の、肩のあたりまで捲手まくりでで何とももって忙しそうな、そのくせ、する事は薩張さっぱりはかどらぬ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文句は薩張さっぱり分らぬが、如何にも深い思いがあるらしく、誰かをさして訴うるらしく、銀の様な声をあげては延ばし、延ばしては収め、誰教うるともない節奏せっそう自然しぜんみょうって
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
よぼよぼした爺さんが出て何か口の中でもぐもぐ言うていたが薩張さっぱり分らない。此奥の小神流川の上流に金鉱が開けてから、若い者は皆其処へ稼ぎに出て村には女子供や老人の外は残っていないらしい。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「奥の離座敷はなれざしきだよ、……船の間——とおいでなすった。ああ、見晴みはらし、と言いてえが、暗くッて薩張さっぱり分らねえ。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう羽織はなしで、つむぎだか銘仙だか、夫とももッい物だか、其も薩張さっぱり分らなかったが、なにしても半襟の掛った柔か物で、前垂まえだれを締めて居たようだった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
新「ヘエ薩張さっぱり心付きませんかったが、店の者が女部屋へ這入っては悪うございますか、もうこれからは決して構いませんように心づけます、決して構いません」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お筆さんを奥へ連れてってなだめて居る内に、お筆さんが居なくなったのだが、桂庵婆アに突合つきあわして掛合えば何うでもなるが、何ういう理由わけだか薩張さっぱり理由が分らねえ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
年頃は二十五六……それとも七か……いや、八か……女の歳は私には薩張さっぱり分らない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
な、其がもとで、人間が何をせうと、をせうと、薩張さっぱり俺が知つた事ではあるまい。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此の野郎も行った当坐とうざ極りが悪く、居たたまらねえで駈出す風な奴だから、行かねえ前に綺麗薩張さっぱり借金を片付ければわっちし、宜うがすか、私が請人うけにんになって居るからね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何と、雪白せっぱく裸身の美女を、こずえまとにした面影おもかげであらうな。松平大島守みなもと何某なにがし、矢の根にしるして、例の菊綴きくとじあおい紋服もんぷく、きり/\と絞つて、ひょうたが、射た、が。射たが、薩張さっぱり当らぬ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
毎日此処これへ参りましては人様のお袖へ縋っていさゝかの御合力ごごうりょくを受けまして親子の者が露命いのちつないで居る者でございます、けれ共今晩斯様かように風が吹きますので薩張さっぱり人通りがございませんから
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すうっと帰って仕舞いましたからなんだか家主にも薩張さっぱり分りません。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やま「はいわたくしは何だか急ぎましたから、薩張さっぱり存じません」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)