自負じふ)” の例文
こんどは、今日こそはと、つい通いつめ、さすが色事にかけては自負じふ満々だった西門慶も、もうふらふらな様子だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はやくせし以來このかたは何にも彼にも只二人さて我口わがくちより此樣な事を申すは自負じふたれど吾儕おのれ性來せいらい潔白けつぱくにて只正直を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
高利貸こうりかし老婦人ろうふじん、いかにも露西亞ロシア露西亞ロシアらしくおもはれ、讀者どくしやをして再讀さいどくするにこゝろおこさしむ。居酒屋いざかやける非職官人ひしよくくわんじん懺悔ざんげ自負じふ白状はくじやうきはめ面白おもしろし。その病妻びようさいことひて
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
すべてのよろこび満足まんぞく自負じふ自信じゝんも、こと/″\く自分をツてしまツて、かはり恐怖きようふが來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しかしながらいまのこの人には、そんな内心ないしんにいくぶん自負じふしているというような、気力きりょくかげもとどめてはいない。きどってだまっていた、むかしのおもかげがただそのかたちばかりに残ってるのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
他国の使臣にたいしては儀礼的な鄭重を極める半面に、ままこういう非礼もよくやるものらしい。——殊に一方は優越を自負じふして役に臨む場合には。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お向けねがいたい。また、玄蕃ならでは、そのような果敢迅速かかんじんそくを要する奇襲は、果し得ぬものと、自負じふいたしまする
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今朝ばかりは、自分がいちばんの早出だろうと自負じふして来たら、もう、役宅の机にむかっているとは、驚いた」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、漸蔵主は、あいてが金銅仏であろうと、うごかして見せるといわぬばかりな自負じふをもって、滔々とうとうと、弁じ出した。迫りつつある天下分け目の形勢をである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国発向の場合には、或いは自分に、という期待はいわず語らず自負じふしていたふうがある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
池田勝三郎信輝しょうざぶろうのぶてるのむかしから、人にうしろ指はさされぬ自負じふをもって、四十九歳までの武人生活をつらぬいて来た彼として、すくなくも、こんどの名折れは、心外でならないにちがいない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)