自儘じまま)” の例文
いかに自儘じままなる説を作るも、他の悪事を見て自家の悪事を恕するの口実に用いんとするが如きは、我輩の断じて許さざる所なり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そこで当分この井戸のたまりで暮らすつもりだが、あんたはここに残ろうと浅草へ帰ろうと、つれないようだが自儘じままにしてもらおうじゃないか
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
母が再縁いたしますと、養父が自儘じままな町住居ずまいをしているような、道楽者の武家でして、私は十六の年、小石川水道町で踊の師匠をはじめました。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
不治のがんだと宣告されてからかえって長い病床の母親は急に機嫌よくなった。やっと自儘じままに出来る身体になれたと言った。
家霊 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
但し年季ちゅうに自儘じままに店を飛び出したり、あるいは不埒を働いて暇を出されるような場合には、その金は主人の方へ没収されてしまうことになる。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神社仏寺とも古来所伝の什物じゅうもつ、衆庶寄付の諸器物、並びに祠堂金しどうきん等はこれまで自儘じままに処分し来たったが、これも一々教部省へ具状すべき筋のものであるか。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
柾木が土蔵の中にとじ籠って、他人を近寄せないというのも、一つには彼はそこで、人の前では押えつけていた、自儘じままな所業を、ほしいままに振舞いたいが為であった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
で、みんなから綜合そうごうしてあのとおりにまとめてしまった。しかしどのれんもどの行も私の自儘じままに作り足したのはない、そのままそろえて完全な一つのものとしたのである。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
都合の好い時に自儘じままに運んだので、私には、そう骨の折れたことではありませんでした。
山肌にひらかれたわずかの田畑は、自儘じまま馬蹄ばていに掘りかえされるし、働き手の男は、山人足に狩り出される。その上、何やかやの名目で取り立てられる年貢、高税の数かず——。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
若しも然らずして単に婦人の一方のみを警しめながら、一方の男子には手を着けず、恰も之を飼放かいはなしにして自儘じまま勝手を許すときは、柔和忍辱の教、美なりと言うも、唯是れ奴隷の心得と言う可きのみ。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一 子供の教育を自儘じままになさざる事
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なんとしても、あの菊石あばたの殿様にお艶さんを自儘じままにさせることはできねえ!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)