胸苦むなぐる)” の例文
おかみさん、この胸苦むなぐるしいほど恨めしい花が、今日丁度にも置いてあつた花屋の前を通りすがつたとは、よほど廻合が惡かつたのだ。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
隆夫は急に胸苦むなぐるしさをおぼえた。はっとおどろくと、あやしい影が隆夫のくびをしめつけているではないか。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ胸苦むなぐるしくなって枕の上の頭を右に傾むけようとした次の瞬間に、赤い血を金盥の底に認めただけである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四季しき押通おしとほあぶらびかりするくらじま筒袖つゝそでつてたまのやうなだと町内ちやうないこわがられる亂暴らんばうなぐさむるひとなき胸苦むなぐるしさのあまり、かりにもやさしうふてれるひとのあれば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うだね。ぼくは何んだか胸苦むなぐるしくなツてたよ。」と儚ないやうなかほをしていふ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
け、両君」と叫ぶ第一回の指揮者ランナウ君の声が沈黙を破つた。剣と剣とはなかば曇つた二月の空にしば/\相触れて鳴つた。間隙すきの無い見事な対戦に観る人の心は胸苦むなぐるしい迄緊張した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そも三田みたの校内にては奢侈しゃしの風をいましめんとて校内に取寄すべき弁当にはいづれもきびしく代価を制限したり。されば料理の材料おのづから粗悪となりてこれをくらへば終日ひねもす胸苦むなぐるしきを覚ゆ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)