胴丸どうまる)” の例文
さても伊那丸いなまるは、小袖こそでのうえに、黒皮くろかわ胴丸どうまる具足ぐそくをつけ、そまつな籠手こて脛当すねあて、黒の陣笠じんがさをまぶかにかぶって、いま、馬上しずかに、あまたけをくだってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その同勢三四十人のなりすさまじさと申したら、悪鬼羅刹あっきらせつとはこのことでございませうか、裸身の上に申訳ばかりの胴丸どうまる臑当すねあてを着けた者は半数もありますことか
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
丈「此間こないだ大工の棟梁が来て、家根やねの事をお話したから、其の事だろうと思っていましたが、何しろお話を聞きましょう、これ胴丸どうまるの火鉢を奥の六畳へ持ってけ」
胴丸どうまるに積もるほこりうづたかきに目もかけず、名に負へる鐵卷くろがねまきは高く長押なげしに掛けられて、螺鈿の櫻を散らせる黒鞘に摺鮫すりざめ鞘卷さやまきし添へたる立姿たちすがたは、し我ならざりせば一月前ひとつきまへの時頼
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
尾張へ行って、胴丸どうまるよろいを一領買って来い——。唐突である。また、余りにも、意外な主人のことばである。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その同勢三四十人のなりすさまじさと申したら、悪鬼羅刹あっきらせつとはこのことでございましょうか、裸身の上に申訳ばかりの胴丸どうまる臑当すねあてを着けた者は半数もありますことか
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
怖々こわ/″\あがって縁側伝いに参りまして、居間へ通って見ますと、一間いっけんは床の間、一方かた/\地袋じぶくろで其の下に煎茶せんちゃの器械が乗って、桐の胴丸どうまる小判形こばんがたの火鉢に利休形りきゅうがた鉄瓶てつびんが掛って
「そちの生国の尾張には、桶皮胴おけかわどうとはちごうて、胴丸どうまるとかいう、新しい工夫の具足ぐそくが、近頃行われておるそうな。一領買うて来い。そちの生国じゃ、勝手はようわきまえておるであろうが」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)