義憤ぎふん)” の例文
彼は、彼の頭に映っている謙蔵と、目の前にしょんぼり立って泣いている誠吉とを結びつけて考えながら、一種の義憤ぎふんにかられて来た。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
読みくだしてゆくうちに、伊那丸の目はいっぱいななみだになった。義憤ぎふん悔恨かいこん交互こうごほおあつくした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを聞いても、石太郎の同級生たちは、同級生としての義憤ぎふんを感じるようなことはなかった。石太郎のことで義憤を感じるなんか、おかしいことだったのである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
けれど人間にんげんであるうえは、同胞どうほうがこんな姿すがたとなったのをて、なんともこころかんじないはずがあろうかとかんがえると、むらむらと義憤ぎふんえるのをどうすることもできませんでした。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平次は妙に義憤ぎふんに燃えます。評判の惡い山崎屋勘兵衞だけなら兎も角、何にも知らぬ、十歳とうの少年を殺したのは、どんな動機があつたにしても許して置けない氣持だつたのです。
第三者で義憤ぎふんの士がそつと十二支組を片附けて居るとでも思はなければなりません。
八五郎が少しく義憤ぎふんを感じたのも無理のないことでした。