紙一重かみひとえ)” の例文
ながいこと相離れていた父と子の心が、いまこそ紙一重かみひとえはばむものもなく、ぴったりと互いに触れあうのを感じた。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
教育のないひとたちの犯罪が如何いかに多いかと云うことがよくわかりますけれど、このひとたちの犯罪も、全く、善悪紙一重かみひとえのふんぎりがかなかった、ほんのささやかな、くだらないところに
紙一重かみひとえの違いが、いつでも千里の外にそれる、それをお松は、運命というものは、いつもこうしたものだと、雄々しくもその時に思いあきらめて、更に新しい仕事を、新しい勇気を見つけては
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あんじょう、彼はこの事件では、一時はまったく犯人のため飜弄ほんろうされ、死と紙一重かみひとえ瀬戸際せとぎわまで追いつめられさえした)のみならず、彼がこの事件に乗気のりきになったのには、もう一つ別の理由があったのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)