端緒たんしょ)” の例文
よって此間じゅうよりギボン、モンセン、スミス等諸家の著述を渉猟しょうりょう致し居候おりそうらえどもいまだに発見の端緒たんしょをも見出みいだし得ざるは残念の至に存候ぞんじそろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大事は今がほんの端緒たんしょ。一名の生命といえ、おろそかにはならぬ。みかどの御為、一新の世直しの為、貴公は生命を惜しまれたい。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくの如く苦辛して得たる者は脳中にみ込む事深ければ再び忘るる事なく(一)、句をものする上に応用しやすく(二)、かつ他日また発明するの端緒たんしょとなるべし(三)。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それがはるかなる西方の指導に呼応したか、はたまた独立して一つの流行の端緒たんしょを作ったかは、まだはっきりとは決し難いにしても、ともかくも或る代の大きな偶然によって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
退屈しのぎの普通平凡の会話に過ぎないのであるが、その普通平凡の話が端緒たんしょとなって、わたしは田宮夫人の口から決して平凡ならざる一種の昔話を聞かされることになったのである。
鰻に呪われた男 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ一つの希望は「歴史癖と考証ずき」で有名な胡適之こてきし先生の門人が、ひょっとすると将来幾多の新端緒たんしょを尋ね出すかもしれない。しかしその時にはもう阿Q正伝は消滅しているかもしれない。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「まだ、どうとも、断言ができんが、下手人には充分に余裕があった。死骸から端緒たんしょを求めようとするのは徒労じゃな」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「儀来河内」というような無意味な漢字に接したのは新らしいだろうが、袋中の『神道記』にもその端緒たんしょは見え、それがまた『椿説弓張月ちんせつゆみはりづき』を透して、はやく私たちの間にも知られていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「うム。端緒たんしょは、つかめたらしいが、左右太ひとりで、その先の御隠殿下まで行くとあるのが、気がかりだ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この島ではなかったろうかという一説なども、少なくとも一応の検討に値いするものだというまでは認められ、さらに進んでは是よりも一層有力なる一地点を、さがし出す端緒たんしょとなるのかも知れない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伊賀上野の一城が、その持主を換えたことは、起りは、私事に発していたが、直ちにこれは、秀吉と織田、徳川聯合軍との、公式な開戦布告に移る端緒たんしょとなった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ、そうたやすく端緒たんしょのつくはずがないわけだ。——ところで、あの仮面めんがどうかしたかな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南北のその機動力をあわせてもなお皆目かいもく、犯人のあしはついていない——というものを、どうして一個半個の目明しが、オイソレと、端緒たんしょを拾って来られるものではない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、官兵衛はつとにその事について、眠る間も肝胆かんたんをくだき、ついに一策を思いついて、おとといからそれに懸り、ようやく今、その端緒たんしょを得て、これへはかりに来たものであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉服屋へはもう女の住居すまいまで洩れている、捕まえる機会といっしょに、自白させる端緒たんしょまで揃ってしまうとは、何という恵まれた晩だろうか——と彼がよろこびの笑みをもらしていると、すうと
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で宮方の者は、こんどの改元を無視して、いぜん元の“元弘二年”を通して行ったので、ここに、一の民に二つの年号があるという畸形な世紀をこの国に以後六十年も見る端緒たんしょとはなったのだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてまた、これが“両統迭立てつりつ”の端緒たんしょにもなったのだ。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵の退路を遮断すれば、挽回ばんかい端緒たんしょを得べしとなした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甚助の誓願にかかった端緒たんしょは、実にそこにあった。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)