石楠花しやくなげ)” の例文
それと言ふのも、六月に石楠花しやくなげが咲き、七月に躑躅つつじが咲くといふやうな深い山の中から採つて來るからである。漆の芽なども旨い。
日光 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
しゆ木瓜ぼけはちら/\とをともし、つゝむだ石楠花しやくなげは、入日いりひあはいろめつゝ、しかまさなのである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見上みあぐる山には松にかゝりて藤の花盛りなり見下みおろせば岩をつゝみて山吹咲こぼれたり躑躅つゝぢ石楠花しやくなげ其間に色を交へ木曾川は雪と散り玉と碎け木曾山は雲を吐きけぶり
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
二人は石楠花しやくなげの藪や、小さな赤松の中を分けて右へ右へと進んで行つた。藪が杜絶えると、下は一面の白ぢやけた砂原で、日が直射して、ギラ/\光つてゐる。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
南岸には石楠花しやくなげが簇生してゐて、今は花はすがれてゐるが、花時の美しさは思ひ遣られる。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それにはそれぞれに「白樺」とか「龍膽りんだう」とか「石楠花しやくなげ」などと云ふ名前がついてゐた。
恢復期 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
これに慈悲の精舎しようじやあり、これに石楠花しやくなげの薫り妙なれば、かれに瓔珞躑躅やうらくつゝじの色もゆるがごとし、いつは清秀、他は雄偉、ともに肥前の名山たることはしばしば世に紹介せられたりし
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
時田 時に、この前頼んどいた石楠花しやくなげは、まだ手にはひらんかね。
浅間山 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)