直実なおざね)” の例文
旧字:直實
治承、寿永の戦いに幾多の生死の下を実際に歩いてきた熊谷次郎直実なおざねの話を、同房の人たちはよく彼の口から聞きたがった。だが、蓮生は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直実なおざねは何人力だったか知らないが、出家しゅっけをしても、「熊谷法力坊入道蓮生法師くまがいほうりきぼうにゅうどうれんしょうほうし」といって未だ鉄の棒でも振り廻しそうだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「こないだも大ざらいがあって、義太夫ぎだゆうを語ったら、熊谷くまがいの次郎直実なおざねというのを熊谷の太郎と言うて笑われたんだ——あ、あれがうちの芸著です、寝坊の親玉」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
伴う人々は安田三郎義定よしさだ、大内太郎惟義これよし、村上判官代康国やすくに、田代冠者信綱などがあり、侍大将には土肥次郎実平、三浦介義澄、畠山庄司次郎重忠、和田小太郎義盛、佐々木四郎高綱、熊谷次郎直実なおざね
「夫の帰りの遅さよと、待つ間ほどなく熊谷くまがいの次郎直実なおざね……」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
栄華を極めた平家の人々の没落してここに剃髪ていはつしている者がかなり多くある中に源氏の大将であった熊谷次郎直実なおざねのような人物も一つ法筵ほうえんの弟子として在るのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じく新六定景——といったような侍たちの中には、俣野またのの五郎景久とか、熊谷くまがいの二郎直実なおざねなどという豪の者も、羽搏はばたく前のわしのように、じっとたたずんで、谷ひとつ彼方むこうの敵を見つめていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)