甘味あまみ)” の例文
そしてその味は夏蜜柑ほどっぱくなくて甘味あまみを有している。これは四、五月ごろに市場にあらわれ、サマー・オレンジと称している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
さう云ふ時には、成る世間せけんとの交渉を稀薄にして、あさでもひるでも構はずる工夫をした。其手段には、極めてあわい、甘味あまみかるい、はなをよく用ひた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
甘味あまみつよ菓子くわしんだくちに、さうして醤油しやうゆあぢ區別くべつするまで發達はつたつしたしたたない與吉よきち卯平うへいとほもたらしたとかせられたほどにはかんじなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
子どもはただ味をおぼえたら忘れぬというだけで、自分でさがし出すことはできないのに、砂糖以外のいろいろの甘味あまみが、つぎからつぎと日本の食べ物に加わってきているのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこへ隆夫の母が、甘味あまみのついたパンをおぼんにのせてたくさん持って来てくれたので、三人はそれをにこにこしてぱくついた。やがてお腹がいっぱいになると、急に疲れが出て来て、睡くなった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老人は甘味あまみ渋味しぶみもない声で
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして畢竟ひっきょうこのオランダイチゴの実も一つの擬果ぎかに属するのだが、それは野外に多きヘビイチゴの実も同じことだ。このヘビイチゴの実には甘味あまみがないからだれもわない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)