玉江たまえ)” の例文
そして、旅宿りょしゅくに二人附添つきそつた、玉野たまの玉江たまえと云ふ女弟子も連れないで、一人でそっと、……日盛ひざかりうした身には苦にならず、町中まちなかを見つゝそぞろに来た。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
玉江たまえさん、今の世の有様ありさまで見ると家庭の幸不幸は全く運任せです。男女ともおたがいに未知の人と結婚して運がければ幸福をける、運が悪ければ不幸を招く。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
乳母うば玉江たまえは、これも、高橋三位満実卿たかはしさんみみつざねきょういもうとで、りっぱな婦人ふじんでした。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
午刻ここのつ(十二時)少し前には、妻玉江たまえ、娘百合ゆり、あやめ、下女おしの、下男作松さくまつ、内弟子鳩谷小八郎を、それぞれの部屋へ入れ、主人春日藤左衛門は、一色友衛とたった二人、奥の稽古部屋に相対して
一人がう、空気草履くうきぞうりの、なまめかしい褄捌つまさばきで駆けて来る、目鼻は玉江たまえ。……う一人は玉野たまのであつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
路傍みちばたやぶはあっても、竹をくじき、枝を折るほどのいきおいもないから、玉江たまえあしは名のみ聞く、……湯のような浅沼あさぬまの蘆を折取おりとって、くるくるとまわしても、何、秋風が吹くものか。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)