犬歯けんし)” の例文
旧字:犬齒
粟野さんはかすかに笑い声をらした。やや鳶色とびいろ口髭くちひげのかげにやっと犬歯けんしの見えるくらい、遠慮深そうに笑ったのである。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それと同時に男の卑しげな犬歯けんしの印象がそれに重なった。その印象が意味するものが、今の俺と何の関係があるのか。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
そして、殆ど反射的に、彼女の鋭い、犬歯けんしは、廣介の二の腕深く喰い入ったのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
Nさんは中々かぬ気らしい。いつも乾いたくちびるのかげに鋭い犬歯けんしの見える人である。
春の夜 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)