漠北ばくほく)” の例文
漠北ばくほくからの使者が来て李陵の軍の健在を伝えたとき、さすがは名将李広りこうの孫と李陵の孤軍奮闘をたたえたのもまた同じ連中ではないのか。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかれども塞外さくがいの事には意を用いること密にして、永楽八年以後、数々しばしば漠北ばくほくを親征せしほどの帝の、帖木児チモル東せんとするを聞きては、いずくんぞ晏然あんぜんたらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けだこの時に当って、元の余孽よけつなお所在に存し、漠北ばくほくは論無く、西陲南裔せいすいなんえいまたことごとくはみんしたがわず、野火やか焼けども尽きず、春風吹いて亦生ぜんとするのいきおいあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
李陵への詔には、ただちに漠北ばくほくに至り東は浚稽山しゅんけいざんから南は竜勒水りょうろくすいの辺までを偵察観望し、もし異状なくんば、浞野侯さくやこうの故道に従って受降城じゅこうじょうに至って士を休めよとある。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
みんの世を治むる、わずかに三十一年、げんえいなおいまだ滅びず、中国に在るもの無しといえども、漠北ばくほくに、塞西さいせいに、辺南へんなんに、元の同種の広大の地域を有して蹯踞ばんきょするもの存し
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
朔風さくふう戎衣じゅういを吹いて寒く、いかにも万里孤軍来たるの感が深い。漠北ばくほく浚稽山しゅんけいざんふもとに至って軍はようやく止営した。すでに敵匈奴きょうどの勢力圏に深く進み入っているのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)