海神かいじん)” の例文
あれは人霊じんれいのみでできる仕業しわざでなく、また海神かいじんのみであったら、よもやあれほどのいたずらはせなかったであろう。
ああ、一たび怒れば海神かいじんおののく『富士』よ。ただこの一回の砲撃で、敵の四機は影もなし。見えるものはただ白い波頭なみがしら、聞えるものはただ黒潮の高鳴たかなりである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
とぎょうてんした龍巻は、二、三十人の手下たちとともに、一どにドッと海神かいじんやしろをかけだしていくと、にわかに、鳥居わきの左右から、ワッという声つなみ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十三弦は暴風雨あらしんで、相模さがみの海に荒ぶる、うみのうなりと、風雨の雄叫おたけびを目の前に耳にするのであった。切々たる哀音は、みことを守って海神かいじんに身をにえささぐる乙橘媛おとたちばなひめの思いを伝えるのだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たゞ海神かいじん(四)なつかしや。
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
橘姫たちばなひめ御物語おんものがたりずこれにてりといたしますが、ただわたくしとして、ちょっとここで申添もうしそえてきたいとおもいますのは、海神かいじんいかりのけんでございます。
梅雪入道ばいせつにゅうどうくらからおりて、海神かいじんやしろ床几しょうぎをひかえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひめがあれをただ海神かいじんいかりとのみかんじたのはいささか間違まちがってるが、それはそうとして、あの場合ばあいひめ心胸むねにはまことになみだぐましい真剣しんけんさが宿やどっていた。