海晏寺かいあんじ)” の例文
広巳の眼の前には初春の寒い月の晩海晏寺かいあんじの前の大榎おおえのきの傍で、往きずりに擦れ違った女の姿が浮んでいた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秋は、あれ見やしゃんせ海晏寺かいあんじのもみじ……江戸の咽喉のどしながわに、この真夜中、ときならぬ提灯の灯が点々と飛んで、さながら、夏は蛍の名所といいたい景色——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
端唄で聞えた海晏寺かいあんじ、王子滝野川、角筈十二社、少し離れて真間の弘法寺など明治時代に持ち越したが、いずれも評判ほどの眺めもなく、今日にては全く噂にも上らぬ有様、交通の便は日光
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「おはようございましたこと、何は、あの此間こないだから行って見たいッて、おっしゃってでした、俤橋、海晏寺かいあんじや滝の川より見事だッて評判の、大塚の関戸のお邸とやらのもみじの方は、お廻りなすっていらっしゃいましたか。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
品川、海晏寺かいあんじ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)