氤氳いんうん)” の例文
陶鮑の詩の句のは、或は望む可く、或は感知す可きもので、山澤より放散する氤氳いんうん溟漠めいばくたる氣を指して居る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かくて妾は宛然さながら甘酒に酔いたる如くに興奮し、結ばれがちの精神も引き立ちて、互いに尊敬の念も起り、時には氤氳いんうんたる口気こうきに接しておのずから野鄙やひの情も
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
花一つ、蕾一つ、高薫氤氳いんうん、発して我が面をうち、乱れて一室の浮塵を鎮め去る。これはお向のたかさんの家からの借物なれど、我が愛は初めて姉に女の児の生れたりし時よりも増れる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
抜けでんとして逡巡ためらい、逡巡いては抜け出でんとし、ては魂と云う個体を、もぎどうにたもちかねて、氤氳いんうんたる瞑氛めいふんが散るともなしに四肢五体に纏綿てんめんして、依々いいたり恋々れんれんたる心持ちである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若し私が此の胸中の氤氳いんうんを言葉によって吐き出す事をしなかったら、私の彫刻が此の表現をひきうけねばならない。勢い、私の彫刻は多分に文学的になり、何かを物語らなければならなくなる。
自分と詩との関係 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
五色氤氳いんうん、といへる、金柯初めて繞繚、玉葉漸く氤氳、といへる、還つて九霄に入りて沆瀣かうがいを成し、夕嵐生ずる処鶴松に帰る、といへる詩の句などによりて見れば
雲のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
自ら其の人の周圍に和氣祥光の氤氳いんうん搖曳するが如きを感じて、衆人が心を之に歸するに至るのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其の附近に氤氳いんうんする霞氣の類との状態に照らして、人事世運の吉凶を考判するのであつて、星氣を侯するといふ語と共に數〻支那の書に於て遭遇するところである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)